旅する法律家のつぶやき

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「アイヌの人権から考える」

 

こんにちは。

 

今日は、日本弁護士連合会主催のシンポジウム

アイヌの人権から考える、独立した人権機関の必要性について」

に参加(視聴)してきました。

 

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ちなみに、日本弁護士連合会(略して「日弁連」)というのは、日本の弁護士(2024年4月1日時点:4万5826名)や弁護士法人が所属している団体です。

弁護士として仕事を行うためには、日本弁護士連合会と各都道府県の弁護士会に会員登録しなければならないのです。

 

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アイヌ」といえば、北海道に「国立アイヌ民族博物館・民族共生象徴空間ウポポイ」が作られたり、漫画・映画「ゴールデンカムイ」が流行ったりと、最近、世間で注目されているように感じます。

 

 

◇国立アイヌ民族博物館・民族共生象徴空間ウポポイ

ainu-upopoy.jp

 

 

そのような中、アイヌの人権問題に精力的に取り組む市川守弘弁護士(旭川弁護士会)やアイヌの方々から、直接アイヌ問題の今(いま)」について講演いただき、いろいろと思考やら感情やらが揺さぶられました。

 

なんとなく漠然と知っていた「アイヌ」の問題。

今回のお話を聞いて、ほんの一部分にすぎないけれど、アイヌ問題に関する歴史的事実や法的問題点がクリアになりました。

 

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有史以前からコタン(蝦夷地(現:北海道)各地にあるアイヌの方々の集落)という集団は、コタンコロクル(村長)の指揮のもと、漁業、狩猟、採集を行い、冠婚葬祭を行い、裁判も行っていた。コタン同士で交易や戦争を行うこともあった。

 

こうした歴史的事実からすれば、コタンという集団は「小さな独立国家」のような存在であり、土地や自然資源に対する権利(先住権)や、集落の構成員に対する自治権(自決権)を持っていたといえる。

 

 

それなのに、江戸時代が終わり明治時代になると、「和人」(蝦夷地外の日本人)である「明治政府」が蝦夷地に開拓使(役所)を置き、蝦夷地支配を進めていった。

 

アイヌの人々やコタンとの協定(話し合い)を結ぶこともなく、強制的・一方的に、土地を取得し、自然資源の漁猟を禁止した。

 

アメリカがインディアンの土地や資源を取得する際に「国家間協定」を結びながら進めたのとは対照的に、明治政府はこうした手続を踏むことなく、一方的にアイヌの財産を奪ったとされる。こうした明治政府のやり方は、アイヌを「対等な集団・国家」として認めない、傲慢で不誠実な態度だと感じる。

 

 

 

「でも、日本を統治するためには仕方なかったのでは・・・?」

 

そんな疑問や考えも思い浮かぶかもしれない。

 

 

 

国家として、日本全土に法律を適用し、統一的なシステム(土地制度や資源利用のルールなど)を造り上げるためには、個人の権利がある程度制約される場面が生じることはやむを得ないこともあると思う(実際、現代でも「土地収用法」という法律により、一定のプロセスを踏んだうえで、国家が強制的に土地を取得できる仕組みがある)。

 

しかし、当時の明治政府のやり方には、やはり、アイヌの人々やコタンという集団に対する「尊重」が全く欠けている。

その結果、「合意」(条約・協定)という当たり前の手続を踏むこともなく、法的に許されない手法で、財産を取り上げ、和人のルールを押し付けた。

 

こうしたプロセスや背後にある考え方自体が本質的な問題なんじゃないかなと、講演を聞いていて考えていた。

 

 

(突然、宇宙人が地球にやってきて「いまからこの土地を支配する。あなたたちと対話する気もないし、その必要すらない」と言ってきたら、すごく腹立たしいですよね・・・)

 

 

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こうした状況の中、「アイヌ」は、国家を相手にしてサケの漁業権の確認を求めて裁判を起こした(代理人は市川守弘弁護士)。

 

 

その裁判の判決が、昨日(2024年4月18日)、札幌地方裁判所で言い渡された。

 

 

もし気になる方がいれば、報道ベースにはなりますが是非チェックしてみてください。

(判決文が公開されたら、このブログでもまた取り上げてみます。)

 

NHK NEWS WEB

www3.nhk.or.jp

 

 

 

「街を抜けて」